臨床心理士が携わる分野
臨床心理士の領域とは
臨床心理士の資格試験の際にも聞かれることですが、心理の世界では働く場所を「領域」と言います。
全部で6領域に分かれていますが、大学院を卒業してすぐの段階では、多くの人が「教育分野」「医療・保健分野」「福祉分野」のいずれかの分野で仕事をすることになります。
まず「教育分野」ですが、最も有名なものはスクールカウンセラーでしょう。他にも、各自治体の教育相談所、発達障害児のための適応指導教室なども「教育分野」に入ります。
この分野は、各都道府県の自治体採用が多く、一種の公務員のような要素もあり、勤務条件は非常勤で週4日、1日8時間勤務という形態が多いです。
ボランティアを募集していることもあり、大学院に在学時から「教育分野」で臨床業務に取り組む学生もいます。
子どもを相手にすることが多い分野ですが、学校職員や各自治体職員との連携を求められることもあり、仕事の内容は非常に幅広いです。
体力があることは前提で、加えて、知能検査、発達障害などの知識も必要となるため、「カウンセリングしかやりたくない」という人にとっては、やりがいを見いだすことが難しい分野かもしれません。
運動会などの定例行事に参加を求める学校もあり、生徒や保護者、学校職員との関係作りも重要な仕事の1つです。
次に「医療・保健分野」ですが、基本的には、大学病院の精神科・診療内科、街中にあるメンタルクリニックなどが該当します。
大学院の在学時に、実習先として指定されることが多い分野でもあります。
この分野では、勤務条件や待遇が勤務場所によって異なります。
時給1,000円で週2の8時間勤務という場所もあれば、週5の常勤で月給23万、賞与・住宅手当付きという場所もあります。
この領域で求められるものは、精神病理の理解と心理テストの知識です。
二大精神疾患と言われている、統合失調症と気分障害の特徴、治療方法の理解は最低限の必須条件になります。
また、心理テスト、特にロールシャッハ・テスト、SCT、ウェクスラー式知能検査の実施と報告書の作成を求められることも多く、知識として身につけておくと、さまざまな場面で役に立ちます。
一般的に医療分野の求人は、他の分野の求人と比較すると「勤務条件や待遇が良くない」と言われています。
しかし、他の分野の求人の応募条件に「医療領域での経験」が掲げられていることも多く、この領域は、心理の世界において、いわゆる修行場として認知されています。
心理の世界で著名な人の経歴を調べると、医療・保健分野から自身のキャリアをスタートさせた方がほとんどです。
「福祉分野」で最もよく耳にしたことがある仕事は、心理判定員・児童心理士ではないでしょうか。
他には、児童相談所や児童養護施設、グループホームなどがあります。
この分野も「教育分野」と同様で、各都道府県の自治体採用が多いです。
公務員として採用された場合、地方上級と同程度の勤務条件・待遇になります。
常勤採用が最も多い分野の1つですが、勤務条件・待遇は決して良いとは言えません。
「福祉分野」の仕事の最大の特徴は、いずれの職場でも「利用者の生活に深く入り込む」ところです。
例えば、児童相談所に勤務した場合、知能検査を用いた心理判定が主な仕事になることは確かですが、非行少年・少女を集めたグループワーク、被虐待児へのカウンセリングなどにも業務の1つとして取り組むことが求められます。
「治療よりも適応」、「支持よりも指示」という考えが浸透している領域であるため、勤務当初は大学院で学んだことと違うと思って、面食らうかもしれません。
いずれの領域にも共通していることですが、
「臨床心理士の仕事=カウンセリング」
というわけではないということです。
カウンセリングだけではなく、心理検査のテスター、福祉施設の職員、高齢者の認知症対応など、その仕事内容は領域により多岐にわたることでしょう。
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